M&Aを活用する場合
親族や従業員への事業承継以外に、近年増加しているのがM&Aを活用した事業承継です。 具体的な方法は大きく分けて2つ。 会社の財産や経営権をすべて他の企業に引き継ぎたい場合には合併や株式の売却、株式交換を行います。 また、一部の資産や事業を残しておきたい場合には、会社分割や事業譲渡を活用することになります。
M&Aによる承継のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
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対策事例~事業譲渡に関するケース~
(1)対策概要
- 創業30年の加工業者
- 従業員約60名
- 売上70億円
- 安定した利益計上
経営者甲(当時59歳)からの相続。現状のまま相続が発生した場合の株価および相続税は、株価95,000円。株式のみの相続税で約6億円。
(2)事業譲渡の実行
効果
本業(利益を生む事業)を譲渡するため、残った会社自体は不動産管理などの利益の薄い会社になり、株価が下落し株式価値はほとんどなくなる。
留意点
- 売却先の模索と選定には細心の注意を払う。これによって経営者が創り上げてきた事業の将来が決まる
- のれん評価の問題(財産評価基本通達やDCFなどケースによって要検討)
- 従業員の転籍や出向の確定(転籍同意書または出向契約書の作成)、これに伴う社会保険取り扱い
- 取引先・従業員への通知など対外的な対応についての説明
- 本業以外に会社に残る不動産などの家賃設定(固定資産税、償却、保険料、金利相当、適正利潤)についての確認
- 事業譲渡契約の印紙税の対応
- 事業譲渡スケジューリングの検討
- 商事法務関係(売買契約、株主総会議事録など)
- 事業譲渡に関する引継ぎ財産のピックアップ
- 保険の取り扱い(既払保険については、残置または解約返戻金相当額での譲渡)
- 関係会社がある場合には、どの会社が何をやるかを明確にしておく(不動産賃貸借契約、製品販売取引、材料仕入取引、リース料の精算、企業年金の掛金精算、退職金の帰属分負担、通信料(電話、郵便代)の精算、金銭消費貸借契約など)
- 税務の異動届の対応
- 事業取得会社としては、取得資金借入額と返済スケジュールのキャッシュフローの提示
(3)会社の整理
事業譲渡後の会社にはもともとの資金が残っているが、将来的な使い道がない。清算などの検討が必要。また、その際の個人株主の課税関係にも要注意。